FEATURE Tシャツのストーリー

FEATURE Tシャツのストーリー

BEATNIK TRIP in Big Sur issue 02

表現者たちを魅了した壮大な自然

Magnificent Scenery Inspires Creators

山と谷に深い森を抱え、断崖の先に海が広がるカリフォルニア州セントラルコーストのビッグサー。断崖絶壁が続く入り組んだ海岸線とサンタルシア山脈などによって閉ざされた場所として環境が保護され、同時に、独自の文化的歴史をたどった。その究極的な景色をホワイトTシャツに身を包んだPASSPO☆の増井みおと歩き、ヘンリー・ミラー・メモリアル・ライブラリーでディレクターのマグナス・トーレンに話を聞いた。

1934年にヘンリー・ミラーの小説『北回帰線』が発表されたとき、そのあからさまな性描写や退廃的な時間の流れを筋書きなく綴るスタイルがスキャンダラスな評価を受けた。しかしそれが、20世紀文学における新しさであり、コンテンポラリーな文化を求める若者たちから圧倒的な支持を受けた。

ミラーの長きにわたる親友であり、1957年の著書『ビッグサーとヒエロニムス・ボッシュ』を捧げた相手でもあるエミル・ホワイトが、ミラーが亡くなったのちに自宅を改築してヘンリー・ミラー・メモリアル・ライブラリーをオープンした。旅行者が立ち寄りミラーの功績に触れられる憩いの場であり、音楽イベントやウェディングなども行われるこのライブラリーで、ディレクターを務めるマグナス・トーレンがミラーのことを次のように語る。


「彼は常に、自分が何者なのかを知るために、その追求作業として文学に取り組んでいた。1923年に2番目の妻であるジューンからのインスピレーションとサポートで、作家として生きる決意をしたヘンリーは、1934年にデビュー作『北回帰線』を完成させる。しかしその時にはまだ、腹の底から湧き上がる自らの衝動のみに従って書いたこの作品を発表することを恐れていた。誰も手に取ってくれないのではないかという恐怖を友人への手紙などにも綴っていたんだが、それは杞憂に過ぎなかった」

旅がヘンリー・ミラーを創作に向かわせた。ブルックリンに生まれたミラーはまずアメリカを放浪し、やがて旧世界であるヨーロッパを目指した。文化や歴史、芸術、文学の源泉に触れようとした。そして、パリでの放蕩の日々を綴った作品が『北回帰線』だった。


第2次世界大戦が起こる頃には、やはり哲学や詩、文学の歴史に触れるためにギリシャに向かい、その渇望を『マルーシの巨像』に著した。こうした作品から、ミラーにとっての旅は、移動や異文化とのコンタクトを意味するのと同時に、自己の内面を探求する行為でもあることがわかってくる。

「1850年代から60年代を皮切りに、ビッグサーには自立を求める人々が住み始め、アーティストや詩人がコミュニティを形成していた。しかし、地形も手伝ってほとんど陸の孤島であり、ビッグサーという地名するほとんど知られていなかった。

1944年にヘンリーはビッグサーにやってきたのだが、スキャンダラスな作家がやってきたということで住人たちの反応はネガティブなものだった。実際にミラーがやってきて、1957年に『ビッグサーとヒエロニムス・ボッシュのオレンジ』を上梓したことで、ビッグサーという地名は一気に有名になってしまったわけだ」

風光明媚な土地での暮らしをユーモラスに描いたこの本は、消費社会を離れたことで得られる豊かさや都市社会への皮肉も綴られており、多くの読者の関心を引いた。そして、のちにビッグサーへとやってくる小説家ジャック・ケルアックなどのビート世代の作家たちを引き寄せたばかりではなく、60年代中盤から70年代にかけてのヒッピームーブメントや反戦思想など、オルタナティブな運動の場所としても人々が集まった。

現在も有名になったとはいえ、国立公園に指定され、独自の文化が息づく繊細な土地としてビッグサーには美しい風景が残されている。ヘンリー・ミラーが執筆の合間に歩いたであろう深い森には木漏れ日が射し、断崖絶壁から碧い海が広がる。何十年、何百年、あるいは何千年も変わらないビッグサーの壮大な自然のなか、Tシャツの白が輝きを放つ。

Henry Miller Memorial Library

ヘンリー・ミラー・メモリアル・ライブラリー

48603 Highway One Big Sur CA 93920

https://henrymiller.org

増井みお

“空と旅”をテーマにした体育会系CAガールズロックユニット、PASSPO☆でベースを担当。踊って歌うアイドルグループであり、ロックユニットでもあるオリジナルのスタンスが注目を集めている。https://twitter.com/miomasui?lang=ja

( 写真 渋谷ゆり / 文 中島良平)

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