PEOPLE 人と暮らし

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My White Life vol.12

My White Life WHITE LIFEを象徴する人々とTシャツの関係

壱岐ゆかり 「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」オーナー/フラワー・プランナー YUKARI IKI 「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」 OWNER / FLOWER PLANNER

真っ白なTシャツだけで自分を表せる女性になりたい

朝4時。夏ならば空が朝焼けに染まり始めるころ。冬ならばまだ真っ暗闇。花屋の1日の始まりはとても早い。

「生花市場は、深夜0時から動いているけれど、人が入っていいのが朝の4時ごろから。いつもだいたい4時半に着いて仕入れを終えたら、店に搬入して、家に戻って子どもを保育園に送り出してから、もう一度店に…。だから、夜も子どもを寝かしつけようとして、たいてい21時ごろには一緒に寝てしまうんです」

聞いているだけで目が回りそうな日々。けれど、とても健康的な忙しさのようでもある。

壱岐ゆかりさんが、花屋を始めたのは6年前。それまでは、インテリアやアパレルブランドのプレスの仕事に就いていて、「デザイナーたちを引き立てるプロになりたい」と、寝る時間を惜しんで働いていた。

睡眠時間30分の生活から一変した

「極端に言うと、その頃は1日30分くらいしか、しっかりと寝る時間を持っていなかったんです。海外のデザイナーとのやりとりだから当然時差があるんですけど、向こうが活動している時間帯、デザイナーが私を必要とする時に、時差を感じさせないでいつでもすぐに対応してあげられるようにと思っていました。だから自ずと昼夜逆転のような生活になっていたんです」

今とは対極にあるような生活サイクル。本人曰く、その当時は性格や話し方までも違っていたという。

「あの頃は、もっと東京にまみれていたような気がします。若かったのもあるけれど、自分というものが確立されていなくて、いろんな情報を飲みこむだけ飲み込んで、溺れているようなところもあった。“私なんて”と思うクセもありました。それが、花屋を始めて植物という有機的なものに囲まれるようになったからなのか、確かなものがわかり始めたというか…。年とともに少しずつ自分ができてきたのもあると思います」

“引き立て役”という意味では、プレス業と花屋には通じる部分があるのかもしれない。けれども、プレス業と少し違うのは、自らの感性を生かして表現しながら誰かを引き立てるというところにある。その積み重ねが、自分という芯を形作っていった。

「真っ白なTシャツにデニム。それだけで様になるような女性になりたいと、ずっと憧れてきたし、今もそうなりたいと思っています」。

内面を膨らませていく年輪のようなもの。それを描くことができた時、過度な装飾で取り繕うようなファッションも、きっと必要がなくなっていく。


初めての自費出版『THE LITTLE SHOP OF FLOWERS』

6年前、花屋になろうと思い立って、誰に聞くでも調べるでもなく市場に行き、「どうすれば花を買えますか?」と仲買さんから教えてもらうような破天荒なスタートから、今ではウインドウディスプレイからCMまで、装花で引き手数多なフラワープランナーへと独学で成長してきた。

「かっこいい花屋になりたい、素敵な花屋になりたいとは、まったく思っていないんです。長く続けていきたいから。等身大より少し頑張るくらい(笑)。緩やかなカーブを描いていきたい」と彼女はいう。けれども、自分をいつも新鮮な環境に置くことは忘れない。昨年は特に、国内外いろんな場所に出向いてエキシビジョンやポップアップを行った。

「知らない土地で、知らない人と関わって、その土地の市場に行くといつもとは違うラインナップの花々に囲まれて。そうした刺激的な環境の中で、自分がどういう装花をするんだろう、という緊張感は味わい続けていきたいと思っています」

そして、今年の3月には、花屋としてのこれまでの6年間を写真でまとめた初めてのジン『THE LITTLE SHOP OF FLOWERS』を自費出版で制作した。「これまで、その時々でいろんな写真家の方たちが撮りためてくれていた写真を編集して、一冊にまとめたんです。自分たちにとっては、これまで走り続けてきた道のりを一旦俯瞰で見てみたいという気持ちもあったし、日々心を奪われる美しい瞬間を花束だけではない形で誰かと共有できたらという思いもありました」

ページをめくる度に、二度とは出合えない瞬間が収められていて、その一つひとつが彼女を取り囲む花屋のリアルだった。花は、刻々と姿を変えていく生物。ある意味それは、生々しさを失うような都市生活の中で、数少ない“確かなもの”と言える。


Yukari Iki

「THE LITTLE SHOP OF FLOWERS」主宰。フラワー・プランナー。インテリアショップ、ファッションプレスなどを経て、2010年、週末だけのフラワーショップを東京・代々木上原にオープン。2013年に現在の東京・原宿に移転。日々の小さな贈り物の提案から展示会やパーティ、結婚式の装飾・演出などを独自のスタイルで展開。2015年にはロサンゼルスでエキシビジョン、12月にはロンドンでワークショップを開催した。

http://www.thelittleshopofflowers.jp

(写真 松本昇大 / 文 石田エリ)

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