PEOPLE 人と暮らし

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My White Life vol.26

My White Life WHITE LIFEを象徴する人々とTシャツの関係

長田佳子 foodremedies主宰 / 菓子研究家 KAKO OSADA PATISSIER

プレーンに封じ込めたいくつものエッセンス

キッチンでは、小さなハーブの束があしらわれた無花果のショートケーキが完成していた。緑の香りが鼻をかすめ、ほのかな甘みとみずみずしさ、かすかなアルコールの刺激が口に広がっていく。凛とした、その見た目をより印象深くさせる味わい。長田佳子さんが、この「foodremedies」らしさにたどり着くまでには、どんなプロセスがあったのだろうか。

YAECAで立ち上げた飲食部門「PLAIN BAKERY」時代

それまでのパティシエの経験はもちろん、「PLAIN BAKERY」(アパレルブランド「YAECA」のフード部門)との出合いは特に、今の彼女の活動を形作るような経験を与えてくれていた。

「『PLAIN BAKERY』をやらせていただいたのは、思いもよらない嬉しいご縁でした。それまで『YAECA』には、お客さんとしてよく通っていたので、徐々にお店の方たちともお話するような関係になっていました。同じころに、友人と月島で『tsuzuru』というお菓子屋さんをしていたのですが、その友人が結婚をして奈良に引っ越すことになったんです。ちょうど東日本大震災のあと間もなかったので、食材調達について根本的に見直すきっかけにもなり、ひとりでどうしていくべきかと考えていて…。そんな時に、『YAECAで立ち上げる飲食部門について一緒に考えてほしい』と、デザイナーさんが声をかけてくださったんです。

実際にお仕事が始まると、デザイナーのお二人がとてもお菓子が好きな方たちで、レシピ開発の時にはいつも『おもしろい味なんだけど、ベーシックなものってなんだろう?』という言葉がでてくるんですね。それで名前には、誰にでも親しみやすい“PLAIN”という言葉を使うのはどうでしょうと、提案させてもらいました」

“プレーン”とは何であるかを追求した

何を以て“プレーン”と言うのだろう。味覚となると定義するのは特に難しい。それは、長田さんにとって、普段何気なく使っているこの言葉の深みに触れるような経験でもあった。

「ちょっと迷走しそうな話ですけど(笑)、あのお仕事に携わってみて、すべての人にとってのプレーンというのは存在しないんだな、ということがわかりました。答えがでないからこそ楽しいし、続けていけるのだということも……。

シンプルだから余計に、自分の好きな味と、誰かの好きな味には誤差がある。甘さを感じるレベルも、好きな食感も、みんなそれぞれに違っていて。だからこそ、『YAECA』らしいプレーンな味の定義を探していこうと、これだと決まるまでは、デザイナーさんも何度も試食に付き合ってくれて、私にとっても有意義な時間を過ごすことができました」

白い洋服を着ることとも少し似たお菓子づくり

ある意味、プレーンを追求するということは、パティシエとしての原点に立ち返ることだったのかもしれない。私の“中身”を知り、それに対してどこまで引き算をするのか、という部分では白い服を着ることとも少し似ている。

材料が透けて見えるようなお菓子づくりの中で見つけた感覚は、お菓子なのかがわからないほどストイックではなく、依存してしまうほど過剰でもない。力の入った心をひとときほどいて、またふと思い出して食べたくなるようなもの。それが彼女のたどり着いた「foodremedies」のお菓子だった。

「パティシエの仕事はつくる度に試食をするんですけど、修行時代には砂糖や小麦のとりすぎから、肌荒れしたり身体が重くなったりという時期がありました。どうすれば身体のバランスが取れるだろうかと、ハーブやアロマの勉強をしていたとき、ある古い文献に昔の人はお菓子や料理に甘味をつけるのに、お砂糖の代わりにスパイスやハーブを入れて調整していたことが書かれていて、そのおもしろさに惹き込まれていったんです。『PLAIN BAKERY』は、伝わりやすさを大切にしていたので、『foodremedies』では、より女性目線で、少々マニアックであったとしてもいい。そんな感覚でハーブやスパイスを使ったお菓子を実験してみようと。身体に負担をかけすぎず、食事の邪魔をしすぎない、という節度の中での冒険を楽しみながらつくれたら、と思うようになりました」

独立してから間もなく2年。「foodremedies」の名前があちこちで飛び交うようになり、11月10日には初となるレシピ本が発売された。最近では、子ども向けのお菓子教室もスタートさせているという。そんな彼女は、これから先にどんな道筋を思い描いているのだろうか。



お菓子の先にみる、これからのこと

「この2年、興味の赴くままにお菓子をつくってきたのですが、もう少し未来のことをイメージしたとき、自分ができるパティシエの仕事で何か社会と接点がもてるようなことができないかと考えるようになりました。

以前なら、お菓子をつくること自体、環境(オーブンなどのお菓子用の器具)が揃わないとできないものだと思いこんでいたんですけど、2年の間でさまざまな土地へ出向いてお菓子をつくるうちに、『そこにあるものだけでも、何かしらはつくれる』という自信に変わってきたんです。そうすると、できること、やってみたいことが、また膨らんできて…。

たとえば、子どもでもお年寄りでも、障害を持った方でも、一緒に楽しくおいしくつくれるお菓子というのはどういうレシピだろう? と。うんと簡単につくれるけど、その少ない作業の些細なところに喜びがあるような。それはどこか “プレーン”を考えることとも少し似ているような気がしています」

長田佳子

フランス菓子の専門店、オーガニックカフェなどで経験を積み、友人とともに和をテーマとした菓子店「tsuzuru」をオープン。2011年よりアパレルブランド「YAECA」のフード部門「PLAIN BAKERY」にてレシピ開発に携わり、2015年に独立。「foodremedies」として、イベント、マーケット、お菓子教室など、さまざまに活動している。11月10日より、初めてとなるレシピ本『foodremediesのお菓子』(地球丸刊)が発売中。

http://foodremedies.info

(写真 松本昇大 / 文 石田エリ)

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