PEOPLE 人と暮らし

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My White Life vol.28

My White Life WHITE LIFEを象徴する人々とTシャツの関係

ピエール・トゥイトゥ シェフ Pierre Touitou Chef / 「VVANT」

食のパリで本物志向の新しいスタイルをつくる

素材の良さと、無駄のない調理法。シンプルの奥にあるこだわりの数々

「ここはパリの10区。ル・マレ(パリの3区から4区にかけて広がる歴史的地域)のアウトサイド。マレ地区や、ピガール地区のように色があるわけでもなく、パリのど真ん中にあるなんの変哲もない場所。かつてはインド人が多く住んでいたことから、インド料理屋がたくさんあって、イースタンヨーロッパのファーやレザーなんかも売っているような場所だったんだよ。住人も50年住んでいる人たちから、最近引っ越してきたヒップスターまでさまざま。なかなかいい雰囲気の街なんだ」(ピエール)。

パリ生まれの、パリ育ち。生粋のパリジャンであるシェフのピエール・トゥイトゥは、ファッション系の店が並ぶお洒落な街でもなく、アーティストが多く住む街でもなく、パリの庶民が普通に暮らす場所を選び、今年4月に店を開けた。「VAIVANT CAVE」と名付けられたバースタイルのレストランでは、メインシェフであるピエールならではのオリジナルのメニューをサービス。「なになに料理」と、一言でいい表せない鮮度を保った料理が、店に足を運ぶ人たちの胃袋を掴んで離さない。

営業は月曜日から金曜日のディナータイムのみ。午後3時にもなると、メガネ姿に袖をクルっとまるめた白いTシャツ姿のピエールが、バーの中にあるキッチンで仕込みを始める。リズムよく流れるその包丁さばきは、とにかく見事。バーからキッチンの中を眺めているだけで、何ができるのかとウキウキしてくる。

「魚介類の調理の仕方は、なま(さしみ)、マリネ、炙るのかの3つにしているんだ。例えばホタテ貝は、抜群に美味しいものを毎日仕入れているから、オリーブオイルと塩、それとイタリアのシシリア地方でしか採れないサツマ(イギリスで言うオレンジのこと)を絞ってかけるだけの味付け。食べてしばらくすると、潮の香りが口の中に広がってくるのがわかるよ。イカは日本で言う”イカの付け”にして、サバは塩と胡椒をまぶしてから洗い流して、オーダーが入ったら炙る。魚に関してはすべてオーダーが入ったら切って調理するようにしているんだ。魚を切るという行為は、僕にとってすごく重要なことなんだ」

食材はその日に使いきる分だけしか仕入れない。だから夜遅くなると人気メニューは食材がなくなることもあり、そうなると「おまかせスタイル」でピエールの料理が振るまわれることも。魚、肉、野菜、そしてパスタをメインに、季節によってメニューはどんどん変えていくそうで、さらには1日のうちでも、客の舌の好みを嗅ぎ分けメニューにはない料理も各々の客の好みに合わせて料理する。少ない人数しか入れない店かもしれないが、「今日は何が美味しいの?」なんて、カウンター越しにマンツーマンで料理を楽しめる贅沢さがこの店にはある。

その用途にあったクオリティの高いもの……食材も、着る服も、その感覚で選んでいる。

「APC」の創立者であるジャン・トゥイトゥを父に持ち、1993年に生まれたピエールは、両親しかり、親族のほとんどがファッション業界で働いている環境で育った。「小さな頃から食べることが好きだったんだけど、料理に興味を持つようになったのは、親父が家でよく料理をしていたのを観ていたからなんだ」。フランスには学生の頃から、学校へ行きながら働くことができるシステムがあるそうで、ピエールは16歳の頃から月の半分をレストランの厨房で働いていた。「まず3年間、ホテル・プラザ・アテネ・パリのキッチンで働いて、その後1年ほどロンドンのピエール・ガニェールのレストランへ。パリへ戻ってきてからは、日本人シェフKEI KOBAYASIの元で働いて、ピタパンサンドが有名なMIZINON、そしてタパスバー、南アメリカ料理などいろいろなスタイルのレストランで料理をやってきた。7年経って、ようやく自分の店を持つことができたんだよ」

大型店から、個人経営の店へ。店がオープンしてからは、数人の仲間とともに料理だけでなく、店全体の方向も見るように。「毎日、発見だらけだよ」と、刺激的な日々を送ることができているそうだ。

ちなみに料理の素材選びと同じく、着る服に関してもピエールが言う”クオリティの高いもの”を選んでいる。「安い、高いとか、そういうことではなく、その用途にあったクオリティの高いもの。HanesのTシャツは役割をきちんと果たしているし、シンプルで普遍的なもの。それと真っ白なTシャツは、僕の気持ちをフレッシュな気分にさせてくれるしね。自分にとって、着る服にもシンパシーを感じることが大切だと思っている」。1950年~1960年のアメリカンスタイルが好きなことから、白いTシャツの袖はロールアップ、シューズは、年に一度買い替える「LA BOTTE GARDINE」のブーツを履くのが鉄板なスタイルなのだそう。

現在、ピエールは「VIVANT CAVE」のシェフとして活躍しながら、その数件隣にピザ屋をオープンしようとしている。壁に鳥の絵が描かれた、100年前は鳥を売っている店だったという場所に、イタリアから窯を持ってきて入れるそうだ。食の世界を常に冒険しながら、自身の生活をイノベイトしている。

ピエール・トゥイトゥ

1993年パリ生まれ。16歳のころより高校へ通いながら、すでにシェフの見習いとして食の世界へ。ホテル・プラザ・アテネ・パリのキッチンに入り、1年留学をしたロンドンではピエール・ガガニェールが経営するレストランにて修行、パリへ戻ってきてからは日本人シェフの小林圭の元で学んだ後、さまざまなスタイルのレストランにて勤務。2016年4月に、パリ10区にオープンしたバースタイルのレストラン「VIVANT CAVE」のメインシェフに就任。魚介類を生で調理するなど、素材を大切にした独自のスタイルのメニューが人気。ちなみに「APC」デザイナーのジャン・トゥイトゥと息子でもある。現在、イタリアンスタイルのピザ屋も計画中。

VIVANT CAVE

住所:43 Rue des Petites Écuries, 75010 Paris

☎+33 (0)1 42 46 43 55

www.vivantparis.com

(写真 Jun Yasui / 文 吉岡加奈)

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