PEOPLE 人と暮らし

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My White Life vol.38

My White Life WHITE LIFEを象徴する人々とTシャツの関係

銀粉蝶 女優 Guin-Poon-Chaw Actress

私の内実と一切関係ないものに参加すること

銀さんの人となりを語るうえで欠かせないものといえば、それは映画の存在だ。初めて映画を観たのは一人で椅子に座れるようになったばかりの3歳の頃。

「なんだか怖かったのとエロかったっていうのは覚えています(笑)」

当時は映画館の数も多く、二本立てで毎週のように上映作品が替わっていた。幼い妹がいたため、両親は「この子(銀さん)は映画さえ観させておけば静かになる」と、事あるごとに親戚が経営する映画館へと連れて行った。

「だから今でも仕事が忙しくて映画館に行く時間がないと、たまたま通りかかった映画館の前で“ハアッ!”て、渇望しちゃって苦しくなるんです」

好きなことだけしていたら二日で死ぬ

「映画は身体の一部」とまで言う一方で、芝居については決して「好き」とは言えないという。

「映画を観ることとお芝居をすることはまったく別のこと。でも、好きなことだけやっていいですよと言われても、たぶん生きていけないでしょう? 映画を観て、本を読んで、散歩して、夜にはサッカー中継でプレミアリーグの試合を観まくるという生活をしていたら2日くらいで死んじゃうと思います。やっぱり私の個人的な内実なんかとは一切関係のない外側にあるものに否が応でも参加するということ、これがおもしろいんです。私がどんな心持ちだろうが、お稽古はするぞ! っていうね。そういうのがなければダメな人間だから」

内実とは関わりのない相手や事象との遭遇。そういえば、この日もつい先程まで『上を下へのジレッタ』で主演を務める横山裕さん(関ジャニ8)が稽古に来ていたとスタッフから伝え聞くと「初めてなのでどういうお芝居をなさるのか今から楽しみ」と、チャーミングな笑みを浮かべていた。同じ演目であっても二度と同じことがない舞台で生き抜いてきたからこそ、新しい出合いへの好奇心も旺盛なのかもしれない。

回数が増えればいいのではなく毎回違うことがいい

「例えば、誤読するのはおもしろいですよ。戯曲というのは、公演が決まり、稽古が始まった瞬間に劇作家のものではなくなるんです。私が読んだ時点で作家とは別の視点が入り込む。そうすると、劇作家の意図とはまったく違う方向へと行くことがあるのですが、そういう道草をして、新しい発見をたくさんした方が舞台は豊かになると思っているんです。作家以外の視点がたくさん入って“誤読”がいい方向へ行くと、それは作品をつくるうえので共同作業になるんです。そういったことがおもしろいですね」

もしかすると、音楽をやっていた頃にもこのようなプロセスを踏んでいれば、銀さんは今も歌い手だった可能性はある。しかし、作品を完成するまでの過程のおもしろさや大切さを教えてくれたのは、奇しくも好きではなかった方の役者の仕事だった。若くまっさらな頃の当時の銀さんには、直情的な音楽よりも感情が入り交じる少し複雑な演劇という経験が必要だったのかもしれない。

「千秋楽に近づくほどいいということではありません。回数が増えればいいというものではなく、舞台は毎日違う。そこが大切なんです。毎日違う発見があり、毎日違う舞台ができあがる。やっている方も観る方にとっても」

「正直大変」。そんなふうに言いながらも、新たなセッションを楽しみにするミュージシャンのように次作のことを語る銀さんは、おそらく芝居という舞台に自ら幕を下ろすことは頭にないだろう。

「以前、舞台でご一緒した時に橋爪功さんがおっしゃっていたんです。役者ほどいい仕事はないよね、いつまででも“やって”っていう人がいる限りやれるんだから、って。本当、確かにそうですよね」

今はまだ真っ白な新作のキャラクターに、銀さんはいったいどんな彩りをつけてくれるのか。また新らたな幕が開くのが楽しみでならない。


妄想歌謡劇『上を下へのジレッタ』(原作:手塚治虫/脚本・演出:倉持裕)

2017年5月7日(日)〜 東京・大阪にて公演

Bunkamuraシアターコクーン・森ノ宮ピロティホール

出演:横山裕 中川翔子 浜野謙太 本仮屋ユイカ 銀粉蝶 竹中直人 他

http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/

銀粉蝶(ギンプンチョウ) 女優

80年代初頭、演出家の生田萬と共に劇団「ブリキの自発団」を創立。小劇場を中心に多数の作品を発表する。確かな演技力と予想もつかない感情溢れる表現は、演出家や監督から高い支持を得ている。2010年、舞台『かたりの椅子』、『ガラスの葉』で第18回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。精力的に舞台出演を重ねるほか、テレビドラマ、映画など多数の作品に出演。

http://www.flyingbox.co.jp

(写真 松本昇大 / 文 今村亮)

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