PEOPLE 人と暮らし

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My White Life vol.54

My White Life WHITE LIFEを象徴する人々とTシャツの関係

加賀美健 現代美術家/Strange Storeオーナー Ken Kagami Contemporary Artist/Strange Store Owner

もはやストレンジ・ストアはお店ではなく作品

現代美術家の加賀美健が、ストレンジ・ストアをオープンしたのは8年前のこと。「普通の古着屋さんじゃつまらないんで、なんだかよくわからないような独特な店ができたらいいなみたいな感じ」で物件を探した。

「前に高円寺で、ホントにボロボロのアパートとも呼べないようなアパートに、仙台から来た若い子がやってる古着屋があったんですよ。もう取り壊されちゃったんですけど、四畳半ぐらいの狭さで天井も低くて、その店が好きで結構通ってたんです。“あ、こんなんで店をできるんだ”って思いながら」

「実家帰れ」は小・中学時代の先輩の言葉

「店を持てて好き勝手にできたらおもしろいだろうなと僕も考えていたんで、あるとき不動産屋に電話してみたんです。それで、2軒目に連れてこられたのがこのアパートだった。もう直感的に“ここだな”ってなって、今年の7月で店を始めてちょうど8年になります」

店員を雇っているわけではないので、展覧会があるときや制作で忙しい時にはストレンジ・ストアは休業。超不定休であることも定着し、店にはおもに加賀美が手がけたオリジナルアイテムを求めて客がやってくる。例えば、ステッカーをはじめ「実家帰れ」と手書きされたものやプリントされたトートバッグなどは、定番シリーズとして人気だ。

「小・中学時代に硬式野球をやってたんですけど、そのチームで1個か2個上に怖い先輩がいて、エラーしたり打てなかったりすると“加賀美、お前実家帰れ”って言うんですよ。この『実家帰れ』シリーズのルーツはそれです。実家帰れも何も、住んでるの実家だから練習終わったら実家帰るのに(笑)。その言葉がおもしれえなってずっと染み付いてて、ステッカーにして友だちに配ったりしたのが最初ですね。聞く人とか見る人によって色々感じることが違うからおもしろいですよね」

店内に並ぶ雑多な手書きコメント付きのアイテムも、〈C〉からリリースするTシャツも、アートとして展覧会で発表される作品も、基本にはユーモアとシニカルな視点がある。そこにエロやポップな要素が組み合わさることで、独特なタイム感で刺さってくる作品が生まれる。

アイデアが集積して作品はポコっと生まれる

「小学生のころから絵がうまかったわけでもないし、プラモデルとか図工も下手で、でも、手が器用で絵がうまい子の絵とかが廊下に貼り出されたりするのを見ると、『うまいけどまったくおもしろくねえな』って思っているような子でした。『それよりもこうしたほうがおもしろいのに』って。

技術はないけど、変なことを常に考えてたんですね。友だちを驚かせるために仕掛けを考えたり、変な絵を描いたりして。それが今は美術に変わっただけで、やってることはあまり変わってないですね」

初めてコマーシャルギャラリーであるタカ・イシイギャラリーで個展『MILK MAN』を行ったのが2003年のこと。その後、ミルクマンの絵がアメリカのバンドであるディアフーフのCDジャケットに使われたり、アパレルとのコラボレーションで注目されたりするなど、出会いを重ねて発表の場を広げながらアーティスト活動を続けてきた。ファウンドオブジェクトを組み合わせた立体やドローイングに始まり、美術史を批評するようなブロンズなどの古典的な素材の採用や、名作モチーフの再解釈などを続けながら。

「普段そんなに出歩くわけではないし、人の展覧会とかにもそんなに行かず、アイデアソースのために何かをするタイプではないんですね。でも普通に生活していても、朝起きてから夜寝るまでに結構おもしろいことが起こるんですよ。娘を小学校まで送った帰りに変なものが道に落ちてたり、夜にニュースを見てたら変な話が流れてきたり。そうすると、何か作りたいものが思いついたりするんですよ。だから1日中ずーっと考えてる感じですね。そこから本能的に、“じゃあ作ってみよう”っていうのが生まれる。そこはすごく直感的ですね」

アートの可能性はまだまだ広がる

海外で作品を発表し、そこでおもしろい作家の展示を見る機会などがあると、シーンの進み具合に刺激を受けることも多いという。

「この前ツイッターで誰かが上げてたんですけど、日本では、日本画と現代美術作品を比べると、日本画の方が全然売り上げがあるんですって。それって結構悲しくないですか?

例えば、ローマン・オンダックっていう僕の好きなヨーロッパの作家がいるんですけど、その人はギャラリーに絵とか作品を展示するんじゃなくて、入り口から人を並ばせて、それを作品として発表したことがあるんですよ。客から見たら、ギャラリーの外にただ人が並んでいるっていう状況。そういうトンチが効いたのはおもしろいですよね。絵を描いて空間に飾らなくても、アーティストがコンセプトをはっきりさせたらアートとして成立しちゃうんで。アーティストはまだまだなんでもできるんだな、って思えていいですよね」

2018年は2月4日に中目黒で『そ展』が終わると、いくつか海外でのアートフェアや展覧会への参加を予定している。あくまでも「自分が作って、自分が作品を見ておもしろいと思えなければダメ」というスタンスで制作を続ける。

「このストレンジ・ストアも8年経ちましたけど、段々お店自体が作品みたいになってきちゃったんで、所属しているギャラリーのオーナーに、“お店を買いたいって言うコレクターがいたら売っちゃっていいよ”って伝えてるんです。アートの世界では空間を買うとかもあるんで、買った人はずっとここの家賃を払い続けてここをキープするのか、この空間を丸ごとどこかに持って行って組み立て直すのかわからないですけど、店ごと作品になって売れちゃったりしたら、それって僕っぽいかなみたいに思ったりするんですよね」

加賀美健

現代美術家/Strange Storeオーナー。1974年、東京出身。企業ロゴや美術史上の名作、ポップアイコンなどを自在に組み合わせ、立体やドローイングなどでシニカルで笑える表現を行う。国内外で作品を発表しながら、代官山でオリジナルアイテムと古着を扱うStrange Storeを経営。アパレルブランドとのコラボレーションも多数。

http://kenkagamiart.blogspot.jp/

https://www.instagram.com/kenkagami/

(写真 松本昇大 / 文 中島良平)

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