FUJI ROCK FESTIVAL '18

時代が変わっても普遍的なフジロックの楽しみ方

Music2018.9.10 Mon.

今年も7月27日(金)から29(日)までの3日間、新潟県苗場スキー場でフジロック・フェスティバル(FRF)が開催された。富士山の麓にあたる天神山スキー場で初開催されて以来、日本にフェスカルチャーを根づかせた最大規模の野外音楽フェスは進化を続けている。

1997年からの初開催から数えて22回目!「フジロックは台風に愛されている」などと言われながらも1度も欠かすことなく毎年開催されているのだから頭が下がる。今回も例に漏れず、7月中旬に発生した台風12号がまるでフジロックに行きたがっているかのような奇跡的な進路をたどり、7月26日(木)の進路予報では絶望的な3日間になると思われた(実際は、金曜日は晴天、土曜日は雨天、日曜日は雨のち晴れ)。

しかし、蓋を開けてみると台風には見舞われたものの、当日になって台風が進路を変えたこともあり直撃は避けられ、「この程度の雨なら慣れたもの」と言わんばかりに観客たちの対応は慣れたもの。それぞれがお気に入りのレインウェアに身を包み、雨のなかでも飛んだり跳ねたり、食したり。中には平然と爆睡している人もちらほら。

やはり、これだけの年月続けてくると、注目したいのは、FRFの運営スタッフはさることながら、観客たちのリテラシーの高さ。「世界一美しい参加型フェス」と謳っているだけあって、観客一人ひとりの雨・寒さ対策であったり、ゴミ分別への意識、フェス初心者へのケアなどが半端ない。

FRFの場合、トイレで使用されているトイレットペーパーはほぼすべて昨年のゴミからリサイクルされたもので有名だが、それはもはや最低限のレベルの話。フェス二日目の土曜日の夜、強風で(テントを固定する)ペグが壊れてしまいテントごと飛ばされてしまったという若者のために、周囲の人が協力してペグを提供して立て直し、修復できたらその場で全員で乾杯するなどという光景はFRFが築いてきた“空気”の賜物だ。

前回の記事でも書いたとおり、フジロックは変化の時期を迎えている。その顕れとしてグリーンステージのヘッドライナーをN.E.R.D.やケンドリック・ラマーが飾ることに、ファンからの反応は少なくなかった。最終日にボブ・ディランを添えたこともまた“変化”の訪れを暗示しているようにも思えた。

ところが、会場を訪れてみると観客の人たちがフジロックを楽しむ姿は何も変わらない。スタージの前では踊りゆられ、晴れた空の下でビールを飲み、家族でピクニックでもするかのうように食事を楽しみ、雨が降れば涼を堪能する。たしかに、20年以上続けてきたフェスだからこそ、変化の時期を迎えるのは当然のこと。大きな時代の流れのなかで変わらないほうが不自然だ。しかし、その真っ只中で見た観客たちの変わらなさは、もはや頼もしくさえ映った。

3日目日曜日の夜、ノーベル文学賞を受賞してから初来日となったボブ・ディランは、何か特別なことをすることもなく、これまでの自分の音楽をやりきるというスタイルを貫いた。見届けた人々は昨年までと同じように惜しむように歓声を上げ、最後までこの祭りを堪能しようと歩きだす。開催前、ラインナップで変化の兆しを示したフジロックだったが、革命は起さなければならない場所でしか、起こす必要はないということなのかもしれない。

FUJI ROCK FESTIVAL 2018

http://www.fujirockfestival.com

Photo: Satoshi Minakawa Text: Ryo Imamura

ページトップへ