Style: Paint Your White Canvas

Vol.02 大社カリン「人間の脳でしか考えられないクリエイトをどうやっていくか」

Creator2019.11.14 Thu.

白いTシャツを身につけた表現者を撮影し、表現への思いについてインタビュー。そして、白いキャンバスに絵を描くようにして自らのスタイルをつくりあげていく彼ら・彼女らの声を、白T姿のスナップとあわせて紹介する。シリーズ第2回は、モデルと画家として活動を続ける大社(おおこそ)カリン。音楽プロジェクトAurainも始動し、10月29日にはデビューEP『6:00』をリリースして注目されている。12月に個展を控えて制作に勤しむ彼女に話を聞いた。

瞬間の感情を絵に落とし込む

「小さい頃からよくお絵描きをしていたので、母親が近所で、芸大を卒業した先生が個人でやっている造形教室を見つけてきてくれたんです。絵を描いたり、粘土で立体を作ったり、紙を切って貼り絵をしたりする教室です。小学校低学年からずっと通ったんですけど、何かを作るのが本当に楽しかった。幼いながらも自分が絵を通して何かを表現する、というプライドみたいなのがその時に生まれたのかもしれません」

中学に入ると美術の先生と仲良くなり、進路相談をしたら美術を本格的に勉強してもいいんじゃないか、と提案されたという。美大の付属高校に進学し、専攻を絞るのは自然な流れだった。

「授業で美術史を勉強したり、昔の偉大なアーティストの作品を見たりすると、もちろんすごいと思って感動することはよくあるんですけど、その画風が素晴らしいからマネしたいとか、模写して覚えた技術を自分の絵に生かしたいとかはあまり思わなくて。あくまでも自分のことをやっているというか、自分のその瞬間の感情を絵に落とし込むみたいな感じでしょうか」

完成イメージを思い浮かべて描き始めるのではなく、「抽象画なので、筆を動かし始めたら地獄の始まりに近いんですけど」と笑う。そのときに使いたい色をキャンバスに乗せ、画面で混ざり合った色の効果から次のイメージが生まれ、手が動く。考えながら筆を動かしているのか、無意識に手が動くままに任せているのかを聞くと、「どっちなんだろう?」と本人も明確に把握しているわけではないようだ。

「この前、AIがなんでも自動補正してくれるカメラアプリが発表されてめちゃめちゃ話題になってたんですけど、テクノロジーがなんでもやってくれちゃうのと、人間の脳でしか考えられないクリエイトをどうやっていくのかと、そのバランスってすごく大事だと思うんですよ。抽象画を描いていて、人間の脳でしか考えられない色やタッチの組み合わせだったり、ぼかし方だったり、人間たらしめるものがなくなったらと考えると怖いですよね。それって表現なの?って。そこはすごく意識しています」

白Tシャツって悪く言えるところがない

大学では、アートプロデュース学部に進学。美術展をはじめとするアート関連の企画を立て、アーティストをマネジメントすることを学んだ。卒業制作では、アーティストとしての自分をプロデュースするプロジェクトとして個展を開催。「誰が来てくれるんだろうって、初めてのときにはめちゃめちゃ怖かったですし、去年の12月に原宿で個展を開催したときもやっぱり不安はありました」と語るが、去年の個展は2日間で280人の来場者を集め、結果からはいい手応えが得られたようだ。

「私のインスタグラムを見てくれる人たちは若い子が多いんですが、“家に絵を飾ろう”というテーマで、そういう子たちにも絵を身近に感じてもらいたいと考えたんです。作品の金額を一番下は5,000円、高くても80,000円ぐらいに設定して、そうしたら学生の子とかも結構買ってくれて。アートに興味を持つきっかけになったとしたら嬉しいですね」

今年も12月に個展を開催する(会期は12月19・20・21日。原宿のJoint Gallery にて) 。現在制作中の一点のモチーフは煙だ。

「お香を焚いていると、香りももちろん好きなんですけど、煙をただじっと見ちゃうんです。ゆらゆら動いて消えていってしまうんですけど、それが神秘的で本当にキレイ。いくらでも見ていられます。その煙の感覚をペインティングにどう落とし込めるか。気づいたら結構前から描き続けているモチーフですね」

制作時のユニフォームは、ワイドめな白いパンツに白いTシャツだ。彼女のSNSを見ても、白T姿は多い。

「普段は基本的にTシャツにデニムが多いんですけど、白Tシャツって何にでもいけるじゃないですか。インナーとしても着れるし、夏はこれ1枚で大丈夫だし、悪く言えるところがない。本当に使いやすいアイテムだから、白Tは1年中欠かせないですね」

幼いころから絵を描き続け、ファッションへの興味を表現に落とし込むことがあれば、今は音楽にも表現を広げている。限定しない。白いキャンバスに色と造形を乗せるように、根っからの表現者である大社カリンは多様な手法と分野に挑戦を続ける。

大社カリン Ookoso Karin

1993年、東京生まれ。女子美術大学付属高校・大学とアートを専攻する傍ら、並行してモデル活動も行う。資生堂のメイクルックや東京コレクションのランウェイに登場するほか、ブランドのルックモデルなども多数。画家としては今年の12月に、原宿のJoint Galleryで個展を開催予定。この10月29日には、元suisuiduckの清水新士、モデルとしても活躍する八木文哉と結成した音楽プロジェクト、AurainのデビューEP『6:00』をリリースし、11月22日には新宿MARZにてライブも行う
Instagram @in_karin
twitter @karin_ookoso


2019.10.29 AurainデビューEP『6:00』 on sale

写真と文:中島良平

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