私の大切な1枚 #09 酒 航太 写真家/スタジオ35分オーナー
動物と目が合うフォトTシャツ
Column2018.2.13 Tue.
特別な思い入れのある1枚のTシャツを紹介してもらう連載コラム。動物園に足繁く通って撮影した「動物」シリーズが評価される写真家であり、ギャラリー機能を持つバー「スタジオ35分」のオーナーでもある酒航太の1枚とは。
ギャラリー兼バー、スタジオ35分。
動物の写真は5年くらい前からずっと撮っていて、基本的には1ヶ月に1回、全国各地の動物園に行き、撮影は長くても3時間くらいなので、ついでに辺鄙な地方に行き、温泉宿に泊まったりしていました。つげ義春的なひなびたところが好きで。そういうところに変な動物園があるんですよ。
以前は動物の他にも撮影していたのですが、動物を撮り始めたら、終わらなくて、ずっと続いてる感じですね。相当の数を撮っていると思います。
(写真提供:スタジオ35分)
僕がやっている『スタジオ35分』という場所は、もともとギャラリーというより、自分の暗室だったんですよ。その前は「スピードプリント35分」という町の写真屋さんでした。それで施工時に、看板に貼ってあったカッティングシートをガリガリ削っていたのですが、35分の文字だけは面白くて残して。ギャラリーがある新井薬師の梅照院では、毎月8・18・28日の縁日に護摩焚きをしているんです。商店街のラーメンなんかもちょっと安くなる感じなんですけど。ここはガラス張りだし、人も通るし、何か展示をできるなと思って。友人の木工作家の佐々木毅君に神社っぽいデザインのフレームとスタンドを3つ作ってもらい、真っ黒にして暗幕で葬式の受付みたいな感じで。護摩焚きの8日に合わせて、でかい動物の顔が3匹並ぶ展示をしていたんです。動物の顔が、こちらを見てるみたいな感じで、ギョッとするでしょ。
静岡県にある掛川花鳥園には色んな種類の猛禽類がいて、その中のフクロウで、「白フクロウ 片目で覗く 汝れの顔」という俳句にして、時事ネタと大喜利を合わせた簡単なDMをまとめたものを作りました。
汝れというのは、昔の言葉で「お前」って意味ですね。そのDMを見た友達がギャラリーの真上に事務所があって、Tシャツを作ってくれたのがきっかけですね。kizm君といって、作家活動をしているのですが、オリジナルやパロディみたいなTシャツ作っていて、kizm channelというウェブサイトで売っています。自分で撮影した写真をTシャツにして、自分で着るのは、正直恥ずかしいですよ。けど、やっちゃってる。笑。
写真と似ている俳句
俳句にハマった理由は、写真と似ているし、カメラがなくても作れるので、自由だなと。どこかに行かなくても考えられますし。制限されたフレームに中でやるという行為自体が写真と似てるんだよね。写真はさ、ビジュアルがかっこいいとかが重要なんだけど、その人なりにしろ、背後が見えるから面白いでしょ。俳句は言葉からビジュアルが見えたら面白いなと思って。自分の言葉や語彙の蓄積が試されますね。それで、お客さんのひとりで俳句をやっている方がいて、興味ある人をリクルートして、35分俳句会を作ろうと思い立ちました。メールで毎月、お題を出して、5句送ってもらい、名前を伏せて、シャッフルして、エクセルにして戻し、匿名で各々ベスト5を選んでもらい、ベストを発表するというゲームみたいな感じですね。顔が割れてなくても、お互いに俳句を知っているような。実際にオフ会もやっているんですけどね。
酒 航太(さけ こうた)
写真家、スタジオ35分ギャラリー兼バーオーナー。武蔵野出身。サンフランシスコの美大卒、スタジオ勤務を経て、1年くらい沖縄に住み、約3年前からここを始める。俳句名は鮭航。スタジオ35分のバー営業は水曜から土曜18時から23時まで。展示はイベントによる。新井薬師近辺のオススメのお店は、哲学堂と他国籍料理「おつかれさん」と「中野園」という焼肉屋とのこと。
写真:八木伸司 文:藤岡茜