あいちトリエンナーレ2019 情の時代

Tシャツ製巨大サウンドシステムが来場者を出迎える

Art2019.8.2 Fri.

2010年にスタートして、3年ごとに開催される国内最大規模の国際芸術祭、あいちトリエンナーレ2019が8月1日よりスタートした。地下鉄・栄駅から、会場の一つであり作品・公演数のもっとも多い愛知芸術文化センターに向かうと、その「幕開け」の意味も込め、地下1階の入口で出迎えてくれるのがTシャツで作られた巨大な幕状のインスタレーション作品だ。

アメリカとメキシコの国境を音楽Tシャツが行き交う

350枚のTシャツをつなぎ合わせ、24本のスピーカーを埋め込んだサウンドシステム型のインスタレーション作品、《Telón de Boca》を手がけたのはメキシコ人アーティストのピア・カミル。デザイナーであるロレーナ・ヴェガとコラボレーションでオリジナルTシャツをデザインし、メキシコのフリーマーケットを訪れることから制作をスタートした。バンドTシャツを販売している店や、バンドTシャツを着ている来場者に声をかけ、自分たちが手がけたTシャツと物々交換を続け、集めたバンドTシャツは合計350枚。「メキシコのフリーマーケットは音楽で彩られ、音楽は象徴でありコアを担ってもいる」という考えから、バンドTシャツを組み合わせた巨大な幕に24本のスピーカーを埋め込み、サウンドシステムで庶民の集うマーケットを表現した。カミル(下写真)はこう語る。

「私は物質の流通や人々の消費行動、マーケットと社会の関係などに興味を持って制作を続けてきました。この作品でTシャツをマテリアルとして選んだのは、一つには、ここにアメリカとメキシコをはじめとするラテンアメリカとのギャップが見えるから。このTシャツをプロデュースするのはアメリカやヨーロッパの音楽産業で、生産する工場はラテンアメリカにある。そしてアメリカでTシャツは販売され、売れ残ると安い値段で大量にラテンアメリカに送られてきて、ラティーノたちがそれを購入する。そんなマーケットの動きがここに使用されている音楽Tシャツの背景にあります」

アメリカの経済搾取のようなシリアスなテーマを、350枚のTシャツを用いた巨大なサウンドシステムのインスタレーションに表現。しかしながら、実際にスピーカーからは楽しい音楽を流したり、イベントでフリースタイルのラップバトルに使用したり、音楽をポジティブに共有するためのサウンドシステムとして機能する。カジュアルに誰もが手にし、音楽のイメージと結びついたTシャツだからこそ生まれたアート作品だ。

『あいちトリエンナーレ2019 情の時代』
2010年にスタートし、4回目を迎える国際芸術祭。芸術監督を務めるのが、ジャーナリスト/メディアアクティビストの津田大介。トランプ政権の誕生やイギリスのEU脱退のような「感情的な時代」であり、SNSなどで「情報」が飛び交い、同時に人の「情け」に訴えかける表現も求められているという考えから「情の時代」というテーマが決まった。#MeTooに見られる男女格差の問題に疑問を提起するために、参加アーティストの男女比を同じにするなど、社会的メッセージの実現という意味でも国際的に注目されている。
会期:2019年8月1日(木)〜10月14日(月・祝)
会場:愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、名古屋市内のまちなか(四間道・円頓寺)、豊田市美術館及び豊田市駅周辺
https://aichitriennale.jp/

ウーゴ・ロンディノーネ《Vocabulary of Solitude》 45体のピエロが、一人の人間が1日に行う45のふるまいを演じるインスタレーション。

今村洋平は、通常プリントに使われるシルクスクリーンを数千回、数万回と作業を重ねて立体化する途方もない作品を手がける。

ワリード・べシュティ《FedEx》《トラベル・ピクチャーズ》 FedExの段ボールにガラスの箱を入れて、実際にFedExのサービスで郵送するとどうなるかを実験した立体作品と、ベルリンの廃墟となったイラク大使館を撮影した写真を、空港の手荷物検査でX線を通して感光させた作品の二つ。旅の痕跡を視覚化、物体化した。

写真と文:中島良平

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