RecruiT:求人Tシャツ vol. 2
Jobs for Everyone 誰もが平等に職を得られる社会
Project2019.5.23 Thu.
Tシャツに日本語で求人情報をプリントする「RecruiT」プロジェクトを展開したグッドマンサービス。Tシャツを求人広告にするというポップな手法をとった背景には、誰もが平等に求人情報と触れ、「平等な雇用の創造」を実現するという社のコンセプトがあった。
フセインさんはなぜ仕事がないの?
ページトップの映像タイトルは、“I am Hussein(私はフセイン)”。実話をもとに生まれた物語だ。“I just want a job(私は仕事が欲しいだけです)”という切実な思いが、イラク人のフセインさんによって語られる。なぜか。「フセイン」という名前がことの理由だ。映像を手がけたクリエイティブディレクターの玉川健司は、その経緯を次のように話す。
「グッドマンサービスの求人情報を使った人の中に、イラク出身のフセインさんという人がリアルにいらっしゃって、イラクでも日本でも名前のせいで求人に応募して断られることがひたすら続いたそうなんです。そういう名前の差別って本当に愚かだと思います。グッドマンサービス社では、そういう名前の差別にも屈せずに仕事探しをサポートしますよ、という姿勢を映像に表現したのです」
実際にインドでも、サダム・フセインさんという人物が40回以上も面接を受けて断られ続けたり、アメリカでオバマ前大統領が「フセイン」というミドルネームを政争に利用されそうになったり、最近では「トランプ」という苗字のアメリカ人の少年がイジメに疲れて改名してしまったり、世界各地に愚かな名前の差別が存在する。
「グッドマンサービスは企業としてすごく成長しています。クライアントに話したのは、成長していく上で、自分たちが世の中にどういう価値をもたらす企業なのかをきちんと発信する必要があるということ。ただ求人をするのではなく、自分たちのポリシーを見せた方が、時代や社会における存在意義を明確にできますから」
差別に負けない職探しのサポート。つまりは平等な雇用機会の創造。グッドマンサービスの企業姿勢を示す「I am Hussein」の映像は、Tシャツという誰もが目にするメディアを求人広告とし、町行く人たちに情報を発信する「RecruiT」のコンセプトとシンクロしている。そして、Tシャツならではのおもしろさをさらにアートディレクターの増田が付け加える。
新しいコミュニケーションの形
「Tシャツって誰もが着る服で、普段は地味な色しか着ない人でもTシャツだったら派手な色を着てもいいだろう、みたいな感覚になれるところがありますよね。『RecruiT』をデザインした時もやっぱりTシャツだから、1件ずつの求人広告をカラフルにしてバリエーションを作ってもおかしくなかった。そういうバリエーションを無理なくできたのは、Tシャツのポテンシャルなのかなという気がしました」
メディアとしてのTシャツ。その活用方法に可能性を感じた彼らが生み出す、新たなTシャツのコミュニケーションを楽しみにしたい。
玉川健司(たまがわけんじ)
福岡県生まれ。クリエイティブディレクター/コピーライター/CMプランナー。ADKマーケティングソリューションズEXクリエイティブユニットに所属。ユーザーと商品の距離を意識しながら、従来の手法に囚われないクリエイティブ開発を行う。受賞歴は「ACC」GOLD/BRONZE/BESTAD賞、「effie」GOLD/SILVER、「WARC」GOLD/Special Award、「Spikes Asia」、「朝日広告賞」、「広告電通賞」優秀作品賞、「TCC」新人賞、「FCC」最高賞など。
https://www.adk.jp
増田総成(ますだふさなり)
静岡県生まれ。アートディレクター。多摩美術大学卒業後、電通テック、ADKを経てCHERRY INC. を設立。表現づくりから関係づくりをコンセプトにユーザー体験を変えるコミュニケーション開発を行う。受賞歴は「2017年クリエイター オブ ザ イヤー メダリスト」、「ACC賞」、「NEWYORK Festival」、「Adfest」、「NEWYORK ADC」、「GOOD DESIGN AWARD」など。
https://chrry.jp
文:中島良平