FUJI ROCK FESTIVAL '18

時代の変化を体感する日、 真のレジェンドが再び革命を起こすのか?

Music2018.7.11 Wed.

1997年夏、富士山の麓にあたる天神山スキー場で初開催されたフジロック・フェスティバル。国内最大級のこの野外ロック・フェスティバルは、1999年に新潟県の苗場スキー場へと会場を移してから今年で20回目を迎える。(トップ画像:宇宙大使☆スター)

真っ白な灰になった第一回FRF

そもそも進化せざるを得ない状況からはじまったのが、フジロック・フェスティバル(以下FRF)。1997年、“フェス”が日本で成功するはずがないと思われていた頃の話。

早朝、河口湖駅で臨時バスを待つ長蛇の行列の最後尾につくのは、日本ではまだ前例のない大型フェスなのだから仕方がない。このあと見られるはずのRED HOT CHILI PEPPERSやRAGE AGAINST THE MACHINE、明日になればBECKやGREEN DAYだって拝めるのだから。ラインナップと天秤にかけてしまえば難なく乗り越えられる、むしろ楽しみのひとつ程度の余裕があった(遅くに到着した人たちはかなり大変だったらしい)。

問題は、なんとかバスに乗って会場に着いたあと。ぽつぽつと降りはじめた雨は、やがて大粒の雨となり、凄まじい強風によって打ち付けられる豪雨はもはや痛みを伴うほど。当時、フェスの情報などまったくない田舎に暮らしていた(本当はあったはずだが)筆者は、“フェス”と聞いただけで「夏!」というイメージが先行してしまい、「Tシャツ何枚かあれば大丈夫っしょ!」的なノリで雨具も防寒具もろくに用意せず現地入りしてしまっていた。

当日コンビニで買ったレインコートは、昼過ぎのTHE HIGH-LOWSあたりで引き裂かれ、FOO FIGHTERSがステージから去っていく頃には、全身びしょ濡れ。しかも、真ん中の前方にいたことも災いした。

「一度休憩すればもうこの場所にはもどれないかもしれない」。そんな貧乏根性がトイレを我慢し、食事も摂らず、ただひたすらアーティストが登場するのを待ち、出てくるやいなやほぼ強引にテンションマックスに上げて、もみくちゃにされるのを利用して体温を上げるというルーティンを繰り返していた。正直、レッチリが出てくる頃には疲労困憊。食事もなく着替えもすべて濡れてしまっていて遭難同然。何の装備もなしに富士山登頂でもしたかのようなボロボロの格好であちこち痙攣したり寒かったりと、満身創痍の自分がいた。あの姿を第三者から見たら、決して友達になろうとは思わなかっただろう。“フェス”では結構知り合いができたりするのに、あの日は誰からも話しかけられず、話かける余裕もなく、最後は声すらも出なかった。その日、筆者は現地の心優しい家族のお宅で一泊させてもらい(よほど哀れに見えたに違いない)、二日目の中止を知らぬまま文字通り真っ白な灰になって帰路についた。

進化を続けてきた20年の歴史

写真:宇宙大使☆スター

そして、2018年。FRFは「進化の行程」から、新たなフェーズへと移行しつつある。最大のステージとなるGREEN STAGEのヘッドライナーに並ぶのは、ファレル・ウィリアムス率いるN.E.R.D、ラップ界の寵児KENDRICK LAMAR、ノーベル文学賞を受賞した生きる伝説ボブ・ディラン。これまでは、どこかしらに王道のロックを含んだトップライナー陣になっていた。レッチリはまさにそれを体現した存在であり、Bjorkしかり、OASISしかり、デジタル時代を迎えてもThe Chemical Brothers、Aphex twinなど、ロックを源流とする大河の先にあるアーティストがヘッドライナーを飾っていた。しかし、今年はN.E.R.DとKENDRICK LAMARというそれぞれ違ったかたちでブラック・ミュージックを表現し、音楽界のトップを疾走する若いアーティストが二夜続き、最後の夜はロックの源流そのものが登場する。このコントラストを一括りに定義することなどできないし、むしろそれこそが今の時代ということなのかもしれない。

(左)ボブ・ディラン (右)KENDRICK LAMAR

N.E.R.D

2018年、初開催から進化を続けてきた“フェス”の形はもはや揺るぎないカルチャーとなって定着しており、いつもと少し違うちょっとしたトライを繰り返すタイミングでもなくなった今、FRFは敢えて進化というより“変化”に挑戦しているのかもしれない。その変化の年に敢えてボブ・ディランをぶつけてくるあたりに「美学」を感じるが、もしかしたらかつての伝説1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルで起きた“音楽”と“常識”のすべてを塗り替えたあの一夜を狙っているとしたら、ぜひ目撃して共犯者となりたいものだ。

FRF’18開催期間中はオフィシャルグッズ売り場(@場外ショップエリア)でTシャツが販売される。

FRF’18 ロゴ×湯沢・苗場20回目記念Tシャツ
FRF18×BEAMSコラボ
The Wonderful! design  works.ロゴ ベアーTシャツ(左 front、右 back)

FUJI ROCK’18 Tシャツ(左 front、右 back)hello! FRF Tシャツ

フジロック’18 × GAN-BAN サッカーTシャツ(左 front、右 back)

FUJI ROCK FESTIVAL 2018

http://www.fujirockfestival.com

文:今村亮

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