California Issue

PAPER OR PLASTIK CAFE:カフェをアートにするLAのファミリービジネス

California Issue2019.6.11 Tue.

ロサンゼルスのW Pico Blvd沿い、かつての印刷工場が味のあるリノベーションで蘇ったカフェとして日々賑わっている。前回の映像編に続き、ファミリービジネスとして展開するこのカフェの発起人であるヤシャのコメントを中心にレポートする。

ダンススタジオに隣接した廃墟

オープンしたのは2010年。パフォーミング・アーティストとして活動していたヤシャ・ミケルソン(トップ画像中央)が、ミモダ・スタジオというダンス・スタジオを所有したことからファミリービジネスの物語が始まった。

「スタジオの隣に廃墟同然となっていた印刷工場があって、天井も高く全面ガラス張りで大通りに面しているので、カフェとしてオープンしたら地域の住民が集まる場が生まれると考えたんだ」と、イタリア出身のヤシャは語る。

「LAにはコミュニティのハブになるようなカフェがないと感じていた。ヨーロッパのカフェ文化をアップデートしてここに持ち込めば、LAのダウンタウンからも近いこの場所で機能すると感じた。スタジオも1枚の扉を隔てて隣接している。ダンサーやミュージシャン、アーティストが集まり、週末の夜にはパフォーマンス・イベントを行えば、日常のカフェとはまた異なる体験が生まれる。ビジネスありきではなく、アート表現の一つとしてカフェをオープンしたいという考えに、妻のアーニャと娘のマリーナも同調してくれたんだ」

いわゆるサードウェーブと呼ばれるスタイルのカフェに、オーガニックな食材をメインとするエシカルな流通で仕入れた食材を使ったメニューを提供する。妻のアーニャ(左)がコーヒー関連の仕入れと管理、バリスタのトレーニングを行い、娘のマリーナ(右)が、プレス対応やイベントの企画、パーティーやケータリングの運営などを担当する。

「このカフェは、昼と夜とで表情が変わるだろう? この全面ガラス張りの構造を生かして、あとは予算を節約して、自分たちで見つけてきた廃材や古い什器などをリフォームして、空間全体をデザインした。壁や床をペイントしたり、スチールの廃材を再利用して照明器具をクラフトしたり、カフェ全体をアートとして表現した。そこに人が集まると、エネルギーが生まれる。即興のデザインで仕上げたこのカフェには、すぐに近所の人々が朝から集まるようになり、やがてハリウッドやダウンタウンから業界関係者もやってくるようになった。コミュニティのハブにしたい、という思いがうまく形になったと感じている」

家族がハッピーに過ごせるカフェ。そこにローカルな人々が集まり、働く従業員たちも毎日を快適に過ごす。

「今の人たちはSNS上でつながって、スマートフォンの画面を通じたコミュニケーションで友だちが増えた気持ちになって安心している。それだけがメインになったら不健康だと思わないか? 直接会ってコミュニケーションを取らずにエネルギーを交換することなんてできない。私はここを自分や家族、訪れた人たちとインタラクトできる心地よい小宇宙として維持したいと思っている」

PAPER OR PLASTIK CAFE

5772 W Pico Blvd Los Angeles, CA 90019
tel: +1 323 935 0268
MON-SAT: 07:00-22:00
SUN: 07:00-20:00

https://paperorplastikcafe.com/

写真と文:中島良平

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