看板メニューをTシャツにします #02

元祖カツレツの洋食店 煉瓦亭

名店料理2018.8.14 Tue.

名店の看板メニューでプリントTシャツを制作する連載企画第2回。日本の洋食文化を切り開いた老舗店として、1895(明治28)年の創業以来、人々に愛され続ける「煉瓦亭」の看板メニューのひとつがポークカツレツだ。

食通として知られる作家の池波正太郎などが足しげく通った名店「煉瓦亭」。具材とご飯を卵に混ぜてから焼き上げたオムライスや、ハヤシライス、ハンバーグなど日本の洋食の元祖とされるようなメニューの数々が有名だが、フランス料理店としての創業から試行錯誤を経て現在のスタイルを獲得したのだという。看板メニューを問い合わせると、4代目の店主、木田浩一朗の口から上がってきたのが「ポークカツレツ」だった。

「明治の中期、フランス料理店は非常に珍しく、銀座で営業しているのも数軒だったといわれています。そこで生き残っていくために、少しでも多くのお客さまに食べていただける料理を提供しなければならず、アレンジを繰り返した末に生まれたのが今の洋食の数々です。その一番の代表格が、カツレツなのです。従来は仔牛のコトレットという、ドライパン粉で揚げてドミグラスソースと温野菜を添えた仔牛料理がオリジナルなのですが、仔牛を豚に、ドライパン粉を生パン粉に置き換え、日本の天ぷらのようにカラッと揚げるスタイルに変えました。そしてキャベツの千切りを付け合わせとし、辛口のウスターソースが合うことを発見して生まれたのが現在のポークカツレツです。日本人の味覚にも非常に合う洋食メニューとして、このスタイルが瞬く間に普及したようです」

サクサクの衣に包まれるのは、ほどよい厚みで脂身が少ない柔らかな豚肉。衣の甘みが肉の旨みと絶妙に混じり合い、ウスターソースの辛みとシャキシャキの千切りキャベツとの相性もたまらない。今やどこのトンカツ屋でも、天ぷらの揚げ油と同じく高温で揚げたサクサクのパン粉の衣と、千切りキャベツの組み合わせは定番だ。そのルーツがここにあったのかと、カツレツを一口ずつ味わいながら日本の洋食文化の歴史を感じることができる。

明治期から続く元祖洋食店の看板を守りながらも、「煉瓦亭」の味が古びることはない。従来の型に固執することなく時代にあった食材を使い、人々の好みを読み取りながら常に革新を続けているからこそ、元祖のイメージを保ちながらこれだけ長く愛され続けているのだ。

煉瓦亭

東京都中央区銀座3-5-16
TEL:03-3561-3882
営業時間:平日 11:15~15:00(L.O. 14:15)、16:40~21:00(L.O. 20:30)
    土曜日・祝日は20:45閉店(L.O. 20:00)
定休日:日曜日

http://ginzarengatei.com/

写真と文:中島良平

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